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回想

その時、妹のところに遊びに来ていた、人のよさそうなカナダ人は
台所に立って、カウボーイハットの街でポテトと肉だらけの食事に辟易していた私の包丁を持つ手を見て、こう言った。
「その持ち方はダメだな、包丁は、柄のところをこう握って持つんだ。刃の上にそんな風に指をあてたら安定しないよ。」
玉ねぎを薄いくし切りにしている最中のこと。

料理を人にふるまい、他人に指図も口出しもされたことのない私は、数回会ったことのあるくらいの外人にいきなりそんなことを言われてあぜんとした。
包丁を持つ手を止めて、口をあけて、しばらく顔をじっと見るくらい。
「この人、私に料理のことで指図している?」
今考えるとなんとも高飛車な女だ。

その時、当時、道具やセオリーにこだわっていた私をよそに、その後私から包丁をなんとなくうばい、彼はあり合わせの材料とままごとのような、菜ばしだけを使って、ビストロの料理をこしらえた。
パン生地をその場でこね、フォカッチャを焼き、シチューを作った。
魔法の用に次々にできあがる料理を見て、何より「食べて」驚いた。


後に、彼がホテルのGMで、新聞の紙面一枚を使って特集されるようなその界隈では有名な、すご腕のシェフだということを知る。
できる人ほど、道具や、作る環境にはこだわらないということも、その時知った。


しばらく会わない間、彼は少し心を病みGMを引退して山中の肉やで働いていた。久しぶりに会うと、「マクロビオティックってしってるかい?今ぼくはマクロビオティックの食事に切り替えたんだ。玄米と野菜が中心の食事なんだよ」肉屋で働いていてマクロビか。。
もちろんマクロビオティックは既に知っていた私だが、実践しているわけでもなく、その時は特に「へー、そうなの。」程度のコメントしか、しなかった。

今、私がベジタリアンになって、人にその料理を振舞おうとしていると知ったら彼は何と言うだろう。
「オー、ユキジャーン、ダッツソーグー」ってとこか。

今彼はドイツに帰って、クリムトの美術館のようなホテルのGMをした後、お医者さんでベジタリアンの奥様と2人の天使と暮らしている。


ベジカフェの仕込み中、何度も何度も彼の記憶が繰り返し立ち現れた。
もちろん、普段の生活の中では、そんなことは皆無だ。
玉ねぎのみじん切りをしながら「残念ながら、まだこんな包丁の持ち方してるよ」
と言ってみて、苦笑した。
何か言いたかったのか・・・。がんばれ、応援してるからという記憶の
メッセージなのか。。
料理をしているあいだ中、その気配はつきまとっていた。

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